2008年2月_ふるさとのあたたかさ

中学を卒業し、親元を離れ、初めての下宿生活。ようよう一年も経とうという時分の夕刻、街中を歩いていると、プーンと懐かしい匂いが漂ってきました。
それは青菜漬けを煮た、菜っ葉の煮漬けの匂いでした。その匂いを嗅いだ瞬間、パアッとふるさとの情景がまぶたに広がり、家族の顔が浮かんできました。家にいる時は、一箸も口にすることがなかったのに、なぜかたまらない郷愁を感じ、今度家に帰ったら真っ先にそれを食べようと思ったものでした。

「自然は寂しい。しかし、人の手が加わると温かくなる。」(民族学者宮本常一氏) 2月5日民族研究家結城登美雄先生の講演の中で紹介された言葉です。「いつまでも消えない、人が集まっている場所が、ふるさとじゃないでしょうか」そうも結城先生はおっしゃいました。画面に写しだされたのは小さな小さな緑きらめく山あいの田んぼ。家族のためにと、じいちゃん、ばあちゃんの心のこもった手と手が、その画面の向こうに見えるようでした。なんと素敵な光景だろうと思った次の瞬間、画面は荒れ果てた雑木に変わっていました。それは、たった十年足らずの時の経過。次々と映し出される過去と現在の対比の画面に、やるせない憤りと、胸につまる苦渋と寂しさが知らず知らずにこみあげてくるのです。

これが現在の、そして現実の姿。人の手がそこから離れた瞬間、そこは索漠(さくばく)としたただの荒地に戻ってしまう。
人の動きや息遣い。話し声や笑い声。そこに人の気配があるだけで、私たち人間はほっとため息をつける。そして少しだけ心が温かくなるのです。その温かさを現代の人間は切に求めているのです。人は人を恋し、会いに訪れて来るのです。
人がそこにいる。そしてそこに温かな生活がある。それがふるさと。ふるさとはいつも温かく迎えてくれる。そんな朝日町を皆が待っています。


広報あさひまち 2008年2月号より

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更新日:2019年03月29日