町長歳時記 2020年7月_私たちの生きる道

九州の水害のニュースが目に飛び込んできました。画面には今にも泣きださんばかりの、そして必死にこらえた表情をした年配の主婦の方がハンカチで口元を抑えながら、「泣き出したい気持ちで一杯なんです。どうして私たちがこんな目に遭わなければならないのでしょうか」。俯いた目元から自然と溢れ出した涙が殊更やるせない思いを私たちに投げかけてくるのです。

七月七日は七夕。年に一度織姫と彦星が天の川を挟んで再会する。そんな淡いロマンを掻き立てた昔話は、本当に夢物語になってしまったのだろうかと思われるような近年の豪雨災害。さらには台風、地震と、私たちを取り巻く環境は、困難極まりない世の中になってしまったと思わずにはいられません。そんな鬱積した空気が世界中を覆っているように思われます。

「一勝九敗」これがこれまでのヒトとウイルスとの戦いの結果で、ヒトが勝ったのは発症者が出ていない天然痘と、ほぼ根絶寸前まで追い込んだポリオぐらいだと、『感染症の世界史』の著者石弘之氏は言っています。人類の歴史は二十万年だが、微生物は四十億年生き抜いてきた強者である、とも言っています。

「サーズ」「マーズ」そして「新型コロナウイルス」とこれからも新たなウイルスが次々と発生していくことが容易に推測されます。

地震、台風、豪雨災害、そして人間よりも遥かな年月を生き延びてきたウイルスなどの微生物。目の前に差し迫って現れてきた、巨大な自然災害や全世界を覆い尽くすウイルス感染症。これらは単に自然がもたらしたもの、環境が創り出したものと捉えるのではなく、私たち人類が自分たちの手で引き起こしたものであるという自覚が必要です。同じ空気に包まれ生きている私たちは、皆の幸せなくして自分たちの幸せなどあり得ないのだと気づき、行動していくことが私たちの生きる道だと実感している毎日です。

広報あさひまち2020年7月号より