町長歳時記 2024年4月_大事なもの

今は亡き、恩師の教え

 今から約50年ほど前の昭和50年、私は宮宿中学校の3年生でありました。当時は町内に西五百川・大谷そして宮宿と3つの中学校がありました。2年後には3つの中学校を統合し、朝日中学校が開校する予定となっており、着々と準備が進められていた頃のことです。

 あと2年でこの学校も閉校してしまうなどということは、当時はそんなに考えることもなく、目の前の学校生活に日々追われていたという感じでありました。夕方遅く部活が終わり、帽子を脱いでグラウンドへ一礼し、それが終わるや否や、体育館外の水飲み場に全力で直行するのが一日の終わりの日課でありました。そんなある日、木造校舎の体育館の外側壁面に足場が築かれ、間もなく白壁の補修が始まりました。

 それを見た私たちは、「あと2年で、この学校も終わりなのに、どうして今頃、こんな大げさに壁の補修なんかしなくちゃいけないのか。もったいないよな」などと話しながら、疲れた重い足取りで、ぶらぶら歩きながら帰っていきました。

 ある日、帰宅時、教頭先生が職員室の窓を開け、「気つけて帰れよ」と私たちに声を掛けてくれました。その時私はずっと気に掛かっていた白壁の修繕のことを、教頭先生に尋ねてみました。「それは、お前たちが大事だからだ。今学校に通っているお前たち生徒が、安心して学校に来て、勉強ができるように、部活ができるように、町が直してくれているんだ。将来のことは将来のことで、町はしっかり対応している。それと同じくらい大切なお前たちのことをしっかりと守ってくれているのが、町なんだぞ。お前たちは何も心配しないで、勉強に部活にがんばれ」

 今は亡き、厳しくも細い目の奥に優しさを湛えた教頭先生の顔が、私の瞼に浮かんで来ます。

 

広報あさひまち 2024年4月号より

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更新日:2024年04月15日