2013年6月_渾身のキック ど真ん中へのシュート

極限の孤独を人間はどう乗り越えていくのか

物凄い表情だった。あるいは鬼のような形相だった。いやもしかしたら、極度の緊張と不安の堆積に意気を無くし青ざめていたのかもしれない。天文学的な日本中の期待の重圧に押しつぶされそうな精神の中、無性に怒りだけが込み上げて来て、それを爆発的なエネルギーに変え、極限状態を自らの強靭な集中力で迷いを吹っ切り、ただ己の信ずる道を突き進む事だけしか考えていなかったに違いない。それは渾身のキック。ど真ん中へのシュート。これが彼が選んだ道である。

騒然たる大轟音が自身のすべてを包み込んでいるにも係わらず、この世のものとも思われないまさにストップモーションの静寂。

本田圭佑26歳。利き足、左足から放たれたシュートは、ゴールど真ん中のネットをつんざき、スタジアムを埋め尽くした大群衆の呻きにも似た静寂を、歓喜の声に変えていった。ワールドカップブラジル大会への大いなる道が切り拓かれた瞬間であった。

孤独には二種類の孤独があり、一つはまさしく自分自身に対してのみの孤独であり、もう一つは無数の人間の期待を左右するであろう事柄に、ただ一人己の決断と行動によって運命が決せられる場面に襲われる自負と責任の入り乱れた中での孤独感である。この孤独と緊張感に押し潰されるか、あるいは、前向きに力強く進んで行くことができるのか。

人生には、様々な苦難困難が待ち受ける。そんな時、それらに度肝を抜かれてへこたれるのではなく、これが人生だ、人が生きるということだと、生きている実感を感得し、むしろこのような機会を与えてくれた運命にありがたく感謝し、喜びの中に前に進んで行く。こんな力強さを本田選手のど真ん中シュートに教えられたような気がします。

広報あさひまち 2013年6月号より

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更新日:2019年03月29日