町長歳時記 2023年10月_小説はありがたいもの

「孟嘗君」と「白圭」

「文どの、人生はたやすいな」

「そうでしょうか」

「そうよ……。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。わしは文どのを助けたおかげで、こういう生き方ができた。礼をいわねばならぬ」

「文こそ、父上に、その数十倍の礼を申さねばなりません」

「いや、そうではない。助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ。文どのにいいたかったのは、それよ」

これは、宮城谷昌光著「孟嘗君〜第5巻〜」に出てきた、「文」と呼ばれた孟嘗君と死の床にある育ての父白圭とのいまわの際での会話であります。

私たちは一般に、「助けてくれた人に礼を言う」と考えるのが、普通であります。しかしここでは、養父たる白圭が、孟嘗君である養子「文」に、「助けてあげた人に礼をいうものだ」と諭しています。

なかなか分かったようで分からない。これは一生掛けて会得するものなのかと思っています。

また「長生きこそ人生の宝だ」と言って息を引き取った白圭の言を受け、後年孟嘗君が語った臣下の公孫戍との会話も深く考えさせられます。

「戍よ、長生きせよ。人が生きることはたいへんなことだ。そのたいへんさがわかって生きることは貴い」

「人のいのちは、すでにあるものを守ってゆくというようなものではない。日々つくってゆくものだ。今日つくったいのちも明日にはこわれる。それゆえ、いのちは日々産みだすものであろう」

「長生きとは、長い生産になりますか」

「今日よりましな自分を明日に画いて今日を生きる。それしかあるまい」

小説はいろんな示唆を私に与えてくれる。ありがたいものです。

広報あさひまち 2023年10月号より

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更新日:2023年10月16日